「ラ・ボエーム」は、ジャコモ・プッチーニの作曲した4幕オペラ。物語はアンリ・ミュルジェールの小説・戯曲「ボヘミアン生活の情景」(1849年)から、台本はジュゼッペ・ジャコーザとルイージ・イッリカの二人によります。

配役

ミミ、お針子(ソプラノ)
ムゼッタ、歌手(ソプラノ)
ロドルフォ、詩人(テノール)
マルチェッロ、画家(バリトン)
ショナール、音楽家(バリトン)
コッリーネ、哲学者(バス)
ブノア、家主(バス)
パルピニョール、行商人(テノール)
アルチンドロ、参議員(バス)
軍曹(バス)
税関吏(バス)
合唱:学生、仕立屋見習い、市民、店主、行商人、兵士、給仕、子ども、等々

演奏時間
約1時間45分(各35分、18分、25分、27分)

あらすじ

場所:パリ、 1830年代

第1幕

パリのカルチエ・ラタンにあるボヘミアン仲間が暮らす屋根裏部屋。クリスマス・イヴ。

画家・マルチェッロと詩人・ロドルフォが火の気の無い部屋で仕事をしています。寒さに耐えかねてロドルフォが売れ残りの原稿を暖炉に入れて燃やします。「世界の損失だ」などと軽口をたたいていると哲学者コッリーネが帰ってきて、何も金になることがなかったとぼやいています。そこへ音楽家ショナールが食料・薪・煙草などを運ぶ従者たちとともに意気揚々と入ってきます。ショナールはこれらをどうやって稼いだかを得意げに語りますが、誰も耳を貸さず貪るように食料に飛び付きます。しかし、ショナールはワイン以外は取り置いて、「今夜はクリスマス・イヴなのだから、皆でカフェ・モミュスに繰り出そう」と提案し、一同賛成します。
そこへ家主のブノアが未払い家賃の催促にやってきます。ボヘミアンたちはブノアにショナールの金を見せて安心させ、ワインをすすめておだてます。家主が酔った勢いで、妻があるにもかかわらず浮気をしていたことを語ると、一同憤慨したふりをして家主を部屋から追い出してしまいます。
彼らは家賃になるはずの金をカフェ・モミュスでの飲食費として分けあいます。皆出かけますが、ロドルフォは書きかけの原稿があるといって一人残って書きつづけます。
そこに誰かがドアをノックします。お針子のミミがカンテラの火を借りに来たのですが、めまいがして床に倒れ込みます。ロドルフォに介抱されて落ち着いたミミは火を借りて礼を言い、立ち去ります。しかし、彼女は鍵を落としたといって戻って来ます、戸口で風が火を吹き消してしまいます。再度火を付けようと、近寄ったロドルフォの持つ火もまた風で消えてしまいます。しかたなく二人は暗闇で鍵を探します。ロドルフォが先に見つけますが、彼はそれを隠しミミに近寄ります。そして彼女の手を取り、はっとするミミに自分のことを詩人らしく語って聞かせます(「冷たい手を」)。続いてミミも自己紹介をします(「私の名はミミ」)。一向に降りてこないロドルフォを待ちかねた仲間が「まだか」と声をかけます。ロドルフォは「今2人でいる、直ぐに追いつくから席を2人分取っておいてくれ」と言います。仲間たちは気を利かせて先に行くことにします。まだ愛を確認したいロドルフォですが、ミミが仲間と一緒に行きたいと言うので後を追ってパリの街に出かけることにします。ふたりの愛情のこもった二重唱で幕がおります。

第2幕

カフェ・モミュス

クリスマスを祝う群集で賑わう通りで、物売りが口々に声を張り上げています。ボヘミアン仲間はカフェに集まり食事を始めます。ロドルフォはミミに帽子を贈ります。そこにマルチェッロの元の恋人ムゼッタが金持ちのパトロンのアルチンドロとともにやってきます。
彼女は頻りにマルチェッロの気を引こうとします(「私が街をあるけば」)。マルチェッロはそれを意地でも無視しようとするのでムゼッタはさらに誘惑を続け、アルチンドロはうろたえます。ついにムゼッタは靴がきつくて痛いと騒ぎ出し、アルチンドロを靴屋へ修理に行かせます。さきほどからムゼッタへの想いを絶ちきれずにいたマルチェッロと邪魔者がいなくなったムゼッタは互いに抱きあいます。彼らは勘定を済ませようとしますが、手持ちの資金が底をついています。ムゼッタは自分と彼らの支払いをアルチンドロに払わせることにします。そこへ帰営する軍隊の行進が通りかかり、その見物の喧騒に紛れて逃げることにします。マルチェッロとコルリーネは片足裸足で歩けないムゼッタを抱え行進の後を追い、周りで見ていた人々はその意気揚々とするのを見て喝采を送ります。その他の人々も行進の後を追います。全員が立ち去った後アルチンドロが靴を持って戻りムゼッタを探します。ギャルソンが彼に勘定書きを手渡すとアルチンドロはその額に驚き、そしてその場に誰もいないのを知って、その場で椅子に座り込み幕となります。

第3幕

ダンフェール門の市外との関税所前。翌年2月。

明け方。衣服行商人が市内にやってきます。他にも様々な商人の行き来があります。居酒屋でムゼッタが歌うのが聞こえます。ミミが登場し激しく咳き込み、居酒屋にマルチェッロを訪ねます。彼はここで看板を描いているといいます。ミミはマルチェッロに、ロドルフォとの生活がうまくいかない悩みを打ち明けます。彼は嫉妬深く、自分に冷たいというのです。ついにロドルフォは昨夜ミミを置いて家を出たといいます(「助けてマルチェッロ」)。マルチェッロは、ロドルフォは宿屋で眠っていると答えます。そこへロドルフォが目を覚まし、マルチェッロを探しに出てくるのでミミは隠れます。ロドルフォはミミのことを問うマルチェッロに、彼女の病気が重く、自分と暮らしていては助からないので別れなくてはならないと打ち開けます。
マルチェッロは陰で聞いているミミのことを案じ、彼を黙らせようとしますが彼女はすでにロドルフォの話をすっかり聞いてしまいます。彼女が泣きながらせき込むのでロドルフォも彼女に気付き、心配しておおげさに言っただけだから心配無いと彼女を慰めます。
居酒屋のムゼッタの嬌声を聞いてマルチェッロが店に駆け込みます。彼は彼でムゼッタの奔放な性格に手こずっていたのです。
ふたりきりになると、彼の配慮を察したミミはロドルフォに別れを告げます。以前住んでいた屋根裏部屋に戻ること、身の周りの細々したものを誰かに取りに行ってもらうことなどを淡々と語りますが、「以前買ってもらったあの帽子だけは、良かったら私の思い出にとって置いて欲しい」と別れを言います(「あなたの愛の声に呼ばれて出た家に」)と、ロドルフォも彼女をいたわりつつ別れの言葉をかわします(「さらば甘い目覚めよ」)。ふたりの歌に並行して、居酒屋から出てきたムゼッタとマルチェッロが激しく言い争って喧嘩別れします。ロドルフォとミミが第1幕最後の愛の言葉を交わす二重唱の一節を繰り返して幕が下ります。

第4幕

再び屋根裏部屋。数ヶ月後。

ロドルフォとマルチェッロが仕事をしていますが、二人とも別れた恋人の事が思い出されて仕事になりません(「ああミミ、君はもう戻ってこない」)。ショナールとコッリーネが食料を持って帰り、四人はいかにも豪勢な食事であるかのように芝居をしながら食べます。演技に興じて決闘のまねごとをしているところに、ムゼッタが血相を変えて賭け込んできます。
ミミと戸口までいっしょに来たが彼女は今そこで倒れた、というのでロドルフォは急いで助けに行きます。ムゼッタは金持ちの所で世話になっていたミミが、死ぬ前に一目ロドルフォに会いたいというので連れて来たことを三人の仲間に語ります。ミミはロドルフォ、仲間たちとの再会を喜びます。彼女をベッドに寝かせると、ムゼッタはミミの手を温めるためのマフを取りに、マルチェッロはムゼッタのアクセサリを売って薬を買うために揃って出て行きます。コッリーネは瀕死のミミのために自分の古着を質に入れようと、ショナールを誘って部屋を去ります(「古い外套よ」)。
2人きりになると、ミミはロドルフォに話しかけます(「みんな行ってしまったのね」)。ロドルフォが例の帽子を見せるとミミは喜び、二人の出会いと幸せな暮らしのことを語りあいます(「ああ、僕のミミ」)。ですがミミは再び気を失い、ロドルフォが声を出すと外で様子をうかがっていたショナールたちが駆込んで来ます。ミミは再び目覚め、ムゼッタが持ってきたマフで手が暖まると喜びます。そのまま眠りにつくミミの側でムゼッタは聖母マリアに祈ります(ムゼッタの祈り)。ショナールがふとミミを見ると彼女はすでに息絶えています。そっと皆に知らせると、ロドルフォは周りのただならぬ様子に事態を察し、ミミの亡骸にすがりついて泣き臥します。


アンナ・ネトレプコ 私が街をあるけば