歌劇「皇帝の花嫁」リムスキー・コルサコフ作曲 (あらすじ/内容)

「皇帝の花嫁」は、ニコライ・リムスキー=コルサコフが作曲した第9番目の歌劇。全4幕からなります。台本はレフ・アレクサンドロヴィチ・メイの同名の詩劇を基にイリヤ・チュメネフが作成。ツァーリ・イヴァン4世の后マルファ・ソバーキナが結婚直後に急死した史実に基づいています。

演奏時間
序曲:約7分、第1幕:約48分、第2幕:約40分、第3幕:約27分、第4幕:約27分、合計:約2時間30分

登場人物

ヴァシリー・ステパノヴィチ・ソバーキン(バス)ノヴゴロドの商人。
マルファ・ソバーキナ(ソプラノ)ソバーキンの娘。
グリゴリー・グリャズノイ(バリトン)オプリーチニク。
マリュータ・スクラートフ(バス)オプリーチニク。イヴァン4世の寵臣。
イヴァン・セルゲーヴィチ・ルイコフ(テノール)貴族(ボヤール)。マルファの婚約者。
リュバーシャ(メゾソプラノ)グリャズノイの愛人。
エリセイ・ボメーリイ(テノール)イヴァン4世の侍医。ドイツ人。
ドムナ・イヴァノヴナ・サブーロヴァ(ソプラノ)商人の妻。
ドゥニャーシャ(メゾソプラノ)サブーロヴァの娘。マルファの友達。
ペトロヴナ(メゾソプラノ)ソバーキン家の家政婦。
皇帝の暖炉焚き(バス)。
小間使いの娘(メゾソプラノ)。
若者(テノール)。
その他

あらすじ

序曲

第1幕「宴会」

グリャズノイの屋敷の客間。

グリャズノイが登場。マルファに一目惚れをし父親であるソバーキンに結婚を申し込みましたが、既に婚約者がいることを理由に断られました。それ以来、自分は腑抜けのようになってしまった、と歌います。続いてマリュータ・スクラートフを先頭にオプリーチニクの面々、マルファの婚約者ルイコフ、グリャズノイが特別に招いた皇帝の侍医ボメーリイが登場、宴会が始まります。まず、外国帰りのルイコフが求められて外国の素晴らしさを歌います。次に一同は皇帝の栄華を讃えて、乾杯し、娘たちが歌い踊ります。

マリュータがリュバーシャの噂をしていると当人が現れます。リュバーシャはグリャズノイに腕ずくでさらわれて来て、今はその愛人となっています。マリュータが歌を所望すると、リュバーシャは民謡風の歌を歌い、一同はその歌声を称えます。

やがて散会となりますが、グリャズノイはボメーリイを引き止め、良い媚薬はないかと尋ねます。ボメーリイは自分で飲ませ飲む時も目の前にいなければいけないが良いのがあると言い、媚薬を調合することを約束しますが、それを盗み聞きしていたリュバーシャは愛を失ったと嘆きグリャズノイをせめます。グリャズノイは冷然とした態度で朝の勤めに出て行きます。残されたリュバーシャは恋敵を必ず見つけ出し、グリャズノイとの仲を引き裂くことを誓います。

第2幕「媚薬」

夕方のアレクサンドロフ村の通り。左手にソバーキン、右手にボメーリイの屋敷。中央に修道院とオプリーチニクの一人ロストフスキー公の屋敷があります。人々が修道院から出て会話をしていると、オプリーチニキが登場し、貴族の領地を襲撃だ、と唱和してロストフスキー公の屋敷へ入って行きます。人々は皇帝のお后選びの話をしたり、ボメーリイから薬を買った若者に魔術師が作った薬など捨ててしまえと忠告したりしていますが、やがて立ち去ります。

続いて、マルファと家政婦のペトロヴナ、友人のドゥニャーシャが修道院から出て来ます。マルファはドゥニャーシャに婚約者ルイコフとの馴れ初めを語って聞かせます。マルファが語り終えた時、イヴァン4世が馬に乗って通りかかります。マルファを見つめた後、無言のまま立ち去ります。二人が皇帝の怖ろしい眼差しについて語っていると、ソバーキンがルイコフを連れて登場、幸せな未来について陽気な四重唱を歌います。ソバーキンはルイコフを夕飯に誘い屋敷に入ります。辺りは暗くなりソバーキンの屋敷に明かりが灯ります。

リュバーシャが登場、屋敷の窓から中を覗きマルファを見つけます。リュバーシャはあんな美人ならグリャズノイが諦めないのも仕方ない、だが私は決して許さないと言い、ボメーリイの屋敷の戸を叩きます。現れたボメーリイに対しリュバーシャは服用してもすぐには死なず、しかし、徐々に容貌が醜くなる毒薬を求めます。そのような毒薬はあると言うので、代償に宝石を渡そうとしますが、ボメーリイはこれを拒み、宝石の代わりに己と関係を結ぶことを要求します。リュバーシャは憤慨して帰ろうとしますが、グリャズノイに全てばらすと脅され、更にソバーキン家からマルファたちの楽しそうな笑い声が聞こえてきたため、逆上して毒薬を注文してしまいます。ボメーリイが調合のため家に入ると、一人残されたリュバーシャは何ということになったのだろうと独白します。

ルイコフがソバーキンの屋敷から出て来ますが、ソバーキンが「明日グリャズノイと一緒に来るがいい」とルイコフに語りかけるのを聞き、リュバーシャは毒薬を服用させるチャンスがあることを知ります。ボメーリイが毒薬が出来たことを伝えに現れ、リュバーシャはマルファがいる窓に向かい、「私を恨まないで、私も高い代償を支払うのだから」と言ってボメーリイの屋敷に入ります。入れ違いに酔っ払ったオプリーチニキがロストフスキー公の屋敷から出て来て勇ましい歌を歌います。

第3幕「介添人」

ソバーキンの屋敷の広間。

「光栄あれ」を用いた序奏で始まります。ルイコフ、ソバーキン、グリャズノイが座って会話しています。ルイコフはマルファと早く結婚させて欲しいと訴えますが、ソバーキンは今は皇帝のお后選びが行われており、マルファもドゥニャーシャも選抜されて12人のお后候補の中に残ってしまった、どうせ選ばれることはないから今しばらく辛抱しろ、と答えます。グリャズノイは薬を入れるチャンスだと思い、花婿の介添人になることを申し出ます。

やがてドゥニャーシャの母親であるドムナ・イヴァノヴナ・サブーロヴァがやって来て、お后選びに付き添いで行った時の様子を話します。皇帝がドゥニャーシャに話し掛けたと興奮して言うので、次第に皆ドゥニャーシャが后になると思い込んでしまいます。ルイコフはようやく結婚できると喜びアリアを歌います。グリャズノイは祝いの杯を準備しますが、花嫁の杯にそっと「媚薬」を入れます。

マルファやドゥニャーシャも帰って来て、グリャズノイは祝いの杯をルイコフとマルファに飲ませます。娘たちが祝い歌を歌い、一同唱和しますが、突然ペトロヴナが皇帝の使いが来た事を伝えます。マリュータ・スクラートフが現れ、マルファが后に選ばれたことを言い渡します。全員驚愕し、ソバーキンは床に倒れ伏します。

第4幕「花嫁」

イヴァン4世の宮殿の一室。奥にマルファの寝室。

マルファは后に選ばれた直後に重病となり、娘を思いソバーキンがアリアを歌います。サブーロヴァがマルファはまだ若いからすぐに回復すると慰めます。小間使いの娘がマルファが目覚めたことを伝え、サブーロヴァが駆け付けようとすると、今度は暖炉焚きが皇帝から使いが来たと伝えます。

グリャズノイが皇帝の使いとして登場、ソバーキンに悪党が后に毒を盛った罪を認めたと報告します。ソバーキンがその悪党は誰か尋ねていると、マルファがドゥニャーシャやサブーロヴァの制止を振り切って奥から現れ、自分は元気で毒など盛られていないと訴えます。しかし、グリャズノイが悪党はルイコフで自分が刑を執行したと言うと、マルファは気を失って倒れてしまいます。人々は口々にルイコフがそんなことをするわけはないと言い、ソバーキンは拷問に耐えられず偽りを言ってしまったのだろうと嘆息します。

やがてマルファが目覚めますが、もはや正気を失っています。グリャズノイをルイコフと思い込み、自分がお后になった夢を見たと語りかけます。良心の呵責に耐え切れなくなったグリャズノイは、マリュータら集まった廷臣の前で自分がマルファに媚薬を盛った事を白状します。人々が驚き非難する中、狂ったマルファはなおも幻のルイコフに語りかけ続けます。

グリャズノイはマルファが狂ったのは、ボメーリイの媚薬のせいだと勘違いし、罰を受ける前にボメーリイを殺すと叫びますが、そこへリュバーシャが現れ、自分が媚薬を毒薬にすり替えたのだと告白します。逆上したグリャズノイはリュバーシャを剣で刺し、リュバーシャは「ありがとう」と言って息絶えます。マリュータらに連行される前に、グリャズノイはマルファに許しを請いますが、マルファは彼をルイコフと思い込んだまま「明日も来てね、ヴァーニャ」と答えます。人々の「神よ」の声で幕となります。


ボリショイ劇場

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