フランス語原題:Le barbier de Séville ou la précaution inutile 「セビリアの理髪師あるいは無用の用心」)
ジョアキーノ・ロッシーニの作曲した2幕のメロドランマ・ブッフォ。

登場人物

アルマヴィーヴァ伯爵 (テノール)
バルトロ(医師)(バス)
ロジーナ(バルトロの姪) (メゾソプラノ)
フィガロ(理髪師)  (バリトン)
バジリオ(音楽教師) (バス)
フィオレッロ(伯爵の召使) (バリトン)
アンブロージョ(バルトロ家の召使) (バス)
ベルタ(バルトロ家の女中)(メゾソプラノ)
士官 (バス)
公証人

演奏時間

約2時間40分(第1幕100分、第2幕60分)

あらすじ

第1幕

第1場
舞台はセビリア。夜明け前のバルトロ邸の前のある広場に、伯爵の召使フィオレッロが数人の楽師を連れて登場。その後、アルマヴィーヴァ伯爵が登場。

バルトロ邸のバルコニーに向かい、伯爵が愛の歌を歌いますが、彼の想い人は現れません。伯爵は落胆し、楽師たちに金を渡し下がらせます。思い切れない伯爵は立ち去らずバルコニーの下で待ちます。フィオレッロも伯爵の合図を待って奥で控えることになります。

夜明けとともに町の何でも屋フィガロが登場します。隠れていた伯爵は、既知であったフィガロにプラドで一目惚れしてしまったこの家の医者の娘を追ってきたことを打ち明けます。フィガロは伯爵に医者は彼女の後見人であることを教えます。

バルコニーにロジーナが登場し、伯爵に手紙を渡そうとしますが、そこにバルトロがやってきて、手にある紙は何かを正します。ロジーナは「無駄な用心」のアリアの歌詞だと言い、バルコニーから手紙を落とし、バルトロに拾ってくるように頼みます。伯爵は手紙を拾い、フィガロと共に隠れますが、表に出てきたバルトロは自分が騙されたことに気づき、ロジーナにバルコニーから家の中に入るように命じます。

手紙には、伯爵に心引かれていること、後見人に禁止されているためバルコニーにでることもできないことが書かれています。伯爵はフィガロから、バルトロがロジーナの資産を狙って妻にしようと目論んでいることを教えられます。外出するバルトロは家の外から、ドン・バジリオに頼み今日中にロジーナと結婚することを家の中に叫び、伯爵たちもそれを知ります。

バルトロがいなくなったので、伯爵はフィガロに促されバルコニーの下からロジーナに愛のカンツォーネを歌います。しかし、自分の地位や資産に関係なくロジーナに愛して欲しいと思い、金のない「リンドーロ」だと名乗ります。ロジーナは好意的な反応を返しますが、見張りがいたため家の中に入ります。

伯爵は今日中にバルトロ邸に入りたいとフィガロに依頼し、報酬として金貨をやると言います。フィガロは金貨に喜び、酔っ払いの軍人のふりをして宿泊証を持って訪問することを提案します。伯爵はその案を採用し、喜び勇んで退場します。置いていかれたフィオレッロが主人の勝手を嘆きつつ退場します。

第1幕第2場

ドン・バルトロの家の自室でロジーナが、リンドーロと結婚する決意を固めます。彼にあてた手紙を書いたので、フィガロに仲介を頼むことを考えます。

出入りの理髪師であるフィガロがやってきて、二人はそれぞれ話をもちかけようとしますが、ドン・バルトロが帰宅したため、フィガロは慌てて身を隠します。バルトロはロジーナを牽制した後、やってきたドン・バジリオに、今日中に秘密裏にロジーナと結婚したいともちかけます。理由として、ロジーナに惚れているアルマヴィーヴァ伯爵がセビリアに来ていることをあげます。ドン・バジリオは伯爵の中傷をロジーナに吹き込むことを提案しますが、バルトロは一刻を争っているため、結婚契約書を作ることを要求し、バジリオはそれを受けます。

二人の企みを盗み聞きしたフィガロは、こっそりやってきたロジーナにそのことを告げますが彼女は歯牙にもかけません。それよりもリンドーロのことを教えてほしいと要求し、フィガロは彼は自分の従兄弟でロジーナに恋をしていることを伝えます。逢引のために手紙を書くようにフィガロが勧めると、ロジーナは既に用意していた手紙を渡します。彼女の抜け目のなさに驚きながらフィガロは手紙を持って退場します。

ロジーナの部屋にバルトロがやってきて、彼女が誰かに手紙を書いたことを突き止め、非難します。さらに召使に監視させることにします。

玄関を乱暴に叩き、騎兵に変装した伯爵が酔っ払いのふりをしながら乱入します。さんざんバルトロをからかい、宿泊証をつきつけてバルトロの家に泊まろうとします。騒ぎにきづいたロジーナは、騎兵を見てすぐに彼がリンドーロであることに気づきます。怒るバルトロの目を盗みながら二人は愛を確かめあいます。伯爵が手紙を落とし、ロジーナはその上にハンカチを落として手紙を拾いますがバルトロに見つかってしまいます。しかしバルトロに取り上げられる前にロジーナは手紙を洗濯物のリストにすりかえます。ロジーナが後見人の横暴を訴えると伯爵が逆上し、軍刀を振り回しはじめます。フィガロが登場し慌てて伯爵を宥めます。大騒ぎをしたため、玄関から軍隊が入って来ます。バルトロが兵士(伯爵)の横暴を士官に訴え、士官は伯爵を逮捕しようとしますが、伯爵が士官にこっそり身分を打ち明けたため一転して敬礼して手を引きます。伯爵の正体を知らないバルトロたちは驚きのあまり固まってしまいます。

第2幕

バルトロが家にいると、今度は音楽教師ドン・バジリオの弟子ドン・アロンゾに化けた伯爵がやって来ます。伯爵は、バジリオは熱のため代わりにきたと偽ります。見舞いに行こうとするドン・バルトロを押しとどめるため、先ほどもらったロジーナの手紙を伯爵の泊まっているホテルで偶然手に入れたと言って渡します。バルトロは、ドン・アロンゾを味方だと信用し、ロジーナの歌の稽古を始めます。ロジーナは一目で伯爵と気づき、二人を見張るバルトロの目をかわしながら、二人は愛を確認しあいます。

フィガロがバルトロの髭を当たるためにやってきます。タオルを取りに行くためにバルトロは部屋を出ようとしますが、フィガロをロジーナのいるところに残すのは危険だと思い、鍵を渡してフィガロにタオルを取ってくるように指示します。フィガロは派手に陶器類を割り、驚き怒りつつバルトロが退場します。フィガロは鍵束からロジーナの部屋の鎧戸の鍵を抜きとって伯爵に渡します。ようやくフィガロがバルトロの髭を当たろうとすると、熱で寝ているはずのドン・バジリオが登場します。

バルトロに具合を尋ねられ、バジリオは何のことかわからない。三人はなんとか誤魔化そうとし、口々にバジリオの顔色が悪い、早く帰るように、しまいにはしょう紅熱だと言い立てる。(「さようなら、先生」)フィガロがバルトロの髭を当たっている間に、伯爵はロジーナに夜に迎えにくることを伝えるが、変装のことを口にしたのをバルトロに聴かれ、正体がばれて伯爵とフィガロは追い出されてしまう。

バルトロは、真相を知るために、召使にバジリオを呼びにいかせ、女中に見張りをさせようとしますが、信用できないと思い自分で戸口に立ちます。バジリオは、自分にドン・アロンゾなどという弟子はいないと言明し、彼は伯爵だろうと告げます。バルトロはすぐに結婚するために、公証人を呼んでくるように頼み、バジリオは引き受けます。

ロジーナに結婚を承諾させるために、バルトロはドン・アロンゾと名乗っていた男(伯爵)から手に入れた手紙を彼女に見せ、アロンゾは彼女をアルマヴィーヴァ伯爵に売るつもりだと吹き込みます。ロジーナはリンドーロ(これも伯爵)に裏切られたと思い、復讐のために結婚を承諾します。

嵐のあと、フィガロと伯爵はロジーナの部屋のバルコニーに到着しますが、ロジーナは自分を伯爵に売った二人をなじります。伯爵はロジーナが、身分も金もない「リンドーロ」を愛していることを知り、感激して正体を明かします。

二人が感激していると、カンテラの光が見え、誰かがやってきたことがわかります。逃げようとするとあるはずの梯子がなくなっていて、三人は進退窮まってしまいます。光はドン・バジリオで結婚証明書の書類をもった公証人をつれてやってきました。その公証人は先だってフィガロが伯爵のために結婚証明書を作るように依頼していた人物だったので、フィガロはバルコニーから声をかけ書類を受け取ろうとします。バジリオは驚いて止めようとするが、伯爵から指輪を渡されたうえ銃で脅され抵抗をやめます。伯爵とロジーナは書類に署名し、フィガロとドン・バジリオが証人となり、結婚が成立します。

バルトロが兵士を連れてきて、フィガロと伯爵を逮捕するように頼みます。伯爵は結婚が成立したことと自らの身分を明かし、無駄な抵抗をやめるように命令します。バジリオに裏切られたバルトロは悔しがり、梯子を外したことが裏目に出たことを後悔しますが、伯爵からロジーナの持参金は必要ないといわれ、鉾を収めます。恋人たちを祝福してフィナーレとなります。


なんでもやの歌