歌劇「ドン・カルロ」ヴェルディ作曲 (あらすじ/内容)

原題 Don Carlo は、ジュゼッペ・ヴェルディ作曲のオペラ。パリ・オペラ座の依頼により、1865年から1866年にかけて作曲され、全5幕のオペラとして1867年3月にオペラ座にて初演されました。

原作はフリードリヒ・フォン・シラー作の戯曲「スペイン王子ドン・カルロス」(1787年作)。

登場人物

フェリペ2世(バス)スペイン国王、ドン・カルロの父
ドン・カルロ (テノール) スペインの皇太子
ロドリーゴ (バリトン )ポーザ侯爵
宗教裁判長( バス )カトリック教会の最高権力者
エリザベッタ(ソプラノ)フランスのヴァロワ王朝の次女
エボリ公女(メゾ・ソプラノ) エリザベートの女官
修道士(バス)先王カール5世の墓所から出てくる修道士
テオバルド( ソプラノ )エリザベートの小姓
レルマ伯爵 (テノール) 貴族
王室の布告者 (テノール)メルマン
天からの声 ( ソプラノ)

あらすじ

舞台: 16世紀半ば、第1幕はフランス、それ以降の幕はスペインへ移る。

第1幕

フォンテンブローの森
フォンテンブローの森の中、時節は冬。遠くに宮殿が見えています。舞台右手に大きな岩があり避難所のようになっています。木こりたち、妻たち、子供たち 幾人かは伐り倒した樫の木を小さく切っています。彼らは合唱で「冬は長く、生活は厳しい、パンは高い、戦争は何時終わるのだ」と窮状を嘆いていいます。今日は王室の狩の日、舞台裏からのファンファーレと獲物を追って走り回る狩人達の叫び声と共にフランス王女エリザベートが現れます。狩人達は木こり達に獲物を与えると去っていきます。この光景をスペインの皇太子ドン・カルロスが物影から窺っています。ドン・カルロスは身分を隠して、婚約者のエリザベートを一目みたいがために、この森に潜入したのでした。この時エリザベートは戦争で貧困に苦しむ民衆の姿を見ます。カルロスはこの時初めて婚約者を見て、アリア「あの人を見て」を歌い愛情を吐露します。エリザベートの後を追っていると、妃の一行は道に迷ってしまいます。角笛が夜を告げると、カルロスはエリザベート及び小姓のティボーと対面します。カルロスはスペインの大使の随員であると名乗り、助けを申し出ます。小姓のティボーが更なる助けを求めて立ち去ると二重唱「一体何をしているのですか」を歌います。エリザベートが自分の婚約者カルロス王子について執拗に質問をして行く内に感情が高ぶっていきます。カルロスはついに王妃に王子の肖像を見せるや否や即座に彼こそが、王子そのものと分ったとエリザベートは喜び、将来の夫に愛の告白をして、二重唱「胸を刺すような激しい想いに」を歌います。この喜びもつかの間、突然祝砲が轟き渡り、愛を囁き合っている二人のところへ、小姓のティボーが伝令に来て、フランス王アンリ2世はエリザベートが王子ドン・カルロスの結婚相手ではなく、スペインのフィリップ2世の王妃に決定したと知らせます。これによりスペインとフランスとの戦争が終結し和平が実現することになると伝えたのでした。皇太子妃になるはずが王妃に変更されたので、エリザベートは驚き、悲嘆に暮れながらアリア「おお、祭りと歓喜の歌よ」を歌います。レルマ伯爵が現れ、結婚の承諾を求めます。国家の決定には逆らうすべもありません。人々の歓喜の祝福の合唱とは裏腹にエリザベートは落胆し、カルロスは自らの呪わしい運命に打ちひしがれるのでした。

第2幕

第1場
サン・ジュスト修道院の回廊
4本のホルンによる荘厳な導入部に舞台裏の合唱が歌うカール5世の葬送歌「カール5世、神聖なる皇帝は」が流れます。裏に墓があり、修道僧たちが祈りを捧げています。すると、祈っていた修道僧の1人が近づいて来て、カール5世は尊大さと愚かさの罪を犯したと呟きます。どん底に落とされたカルロスが、心の安らぎを求めて入って来ます。「息子よ、地上の悩みは、」と荘重に吟じられます。この神聖な場所にも俗世の苦しみが押し寄せていることをカルロスに示唆するのでした。その声がカルロスに祖父カール5世を思い起こさせるのでした。すると宮廷での唯一の理解者で親友の、ポーザ侯爵ロドリーグがやって来ます。虐げられているフランドルの民を救うため、気持ちを切り替えるようにとアリア「私はフランドルにいました」を歌い、カルロスを奮い立たせます。カルロスも「我が仲間、我が友よ」を熱く歌い、新しい道に歩踏み出す決心をします。フランドルは新教徒が多いために、カトリック教のスペインは弾圧を続けていたのでした。父王の妃になってしまったエリザベートへの愛に苦しむ彼に罪深い恋を告白します。ロドリーグも「我が友よ」を返して歌い、戦いに加わることで愛の苦悩を忘れることを忠告します。2人は義兄弟の契りを結び、二重唱「神よ、あなたは我々の胸に」と誓い合います。その間に王フィリップ2世と王妃エリザベートが中庭を通り抜け、修道院へと入って行きます。

第2場
修道院の前庭
修道院に入ることを許されていない付き人の女官たちが修道院の前庭に集まっています。その中に、美しさが際立つエボリ公女の楽しそうな姿も見受けられます。エボリ公女は密かにカルロス王子を慕っています。女声合唱が「葉の生い茂った木の下で」を歌います。途中から小姓デバルトとの二重唱となり、女官たちの合唱も加わります。ロドリーゴに出会い、母親からの手紙を受け取りますが、一緒にカルロの手紙もこっそり手渡されます。その手紙にはロドリーゴを信頼するようにと書かれています。エリザベートが登場すると、女官たちも静まります。そこへロドリーゴが、拝謁を求めて使いを伴って来ます。彼はフランス王室の母君からの手紙と一緒に、こっそりとカルロスからの書状を添えて手渡します。その手紙にはロドリーゴを信頼するようにと書かれています。ロドリーゴはエボリ公女と宮廷風の挨拶と会話を交わしながら、エリザベートが手紙を読むのを待っています。手紙を読み不安に苛まれる王妃にロドリーグは、静かにカンタービレのロマンス「我らの希望であるカルロス王子は」を歌い出し、カルロスが父に願いを聞き入れられず苦しみ新しい母に会いたがっていることを伝えます。彼女は過去を思い出して悲しみに浸りますが、傍らで聞いていたエボリ公女は、カルロスが自分への愛に苦しんでいると勝手に勘違いします。ロドリーゴとエボリ公女が付き人たちと共に立ち去ると、王妃の前にカルロスが現れます。カルロスは王妃に自分をフランドルへ派遣するよう、王フィリップ2世に取り計らって欲しいと懇願します。しかし、ほどなく対話は愛の告白に変わります。エリザベートはアリア「私の足元で」歌い、彼女の愛情を伝えます。我に返ったエリザベートはカルロスをさえぎり、二人が結ばれることは不可能だと言います。カルロスは芝生の上で気を失いますが、やがて悲しみに打ちひしがれて立ち去り、ひとりになった王妃は泣き崩れ、神に助けを請います。突然王が姿をみせ、王妃から離れたかどで女官のアランベール伯爵夫人に明朝フランスへ帰るよう言い渡します。出発する女官に、エリザベートは優しい言葉で泣き出す婦人に別れの挨拶をします。王はロドリーゴにその場に残るよう合図します。なぜ帰国後に一度も挨拶に来ないのかと質します。ロドリーゴはフランドルの救い難いほどの状況を説明しますが、王は冷酷にも政治による支配が必要だと答えます。だがロドリーゴは、それに明確に反対しフランドルには解放が必要であると率直に本音を口上します。王に追従するばかりの取り巻きの廷臣たちとは、心底誠実な彼の提言に驚きますが、それでもロドリーゴに対する信頼を抱きます。一方で、大審問官の恐ろしい権力のことを思い出させ、大審問官には注意するようにと警告します。フィリップ2世は王妃と皇太子の仲が怪しいので、王妃への謁見の自由を与えるから、その仲を探るようにと命令します。ロドリーゴは喜んで引き受け、二重唱「陛下、私はフランドルから参りました」で結びます。

第3幕

第1場
噴水のある王宮の庭園
祝典の行事が続いていいます。翌日にはフィリップ2世の戴冠式が執り行われることになっています。エキゾチックな嗜好を凝らした音楽が展開されます、カスタネットに合わせて合唱が「なんて沢山の花々、なんて沢山の星たち」を歌います。エリザベートとエボリ公女を伴ってやってきます。エリザベートは祝典の行事に辟易し、仮面を交換し、場を立ち去ります。 王妃の舞踏会「ラ・ペレグリーナ」 が踊られます。 エリザベートからの逢引の手紙と信じて、カルロスはいそいそとやって来ます。エボリが入ってくるが、エリザベートのマスクを着けています。それとは知らず彼は愛を告白してしまいます。カルロスはヴェールをとって人違いだと誤解に気づきますが、動揺を隠せません。エボリ公女は最初、彼の困惑の理由を取り違え、宥めようとしロドリーゴと国王が密会して、皇太子のことを話していたと告げます。しかしエボリ公女は間もなくカルロスと王妃の関係を理解し、激しい嫉妬にかられて仕返しを決意します。ロドリーゴが間に入って友人カルロスを弁護し、エボリ公女と脅すが効き目はありません。危険を察知したロドリーゴはカルロスにフランドルからの文書を渡すように促します。

第2場
バリャドリッドの大聖堂の前にある大きな広場
民衆が集まり、国王を讃える大合唱「歓喜に溢れたこの幸福な日に」。葬送行進曲が鳴り響く中、宗教裁判所で有罪とされた異端者を火刑台に連行する修道僧がやって来ます。聖堂の扉が開かれ、王と廷臣たちが入場すると、王が異端者の処刑を宣告します。すると喪服を着てあらわれたカルロスに先導された6人のフランドルの代表団が王の前にひれ伏し、祖国への正義を求め抑圧されているフランドルの民にお慈悲をと願います。だが王は彼らを反逆者と決めつけ、皇太子の介入を叱責します。するとカルロスは剣を抜いて、フランドルの救済を宣言します。この無礼な振る舞いに、王は不敬罪に当たるとし息子の武器を取り上げるよう命じますが、スペインの大公たちはドン・カルロスの前に怖気づき誰も王子に近づこうとしません。ロドリーゴが間に入り、かろうじて直接の決闘は避けられます。だがロドリーゴが、彼に剣を差し出せと求めます。カルロスは一瞬驚きますが、おとなしく剣を渡します。ロドリーゴも剣を王に差し出します。その場で王はロドリーゴに公爵の位を授けます。王は妃の手を取って退場します。廷臣たちもみなあとに続きます、彼らは火焙りを見るため見物席につきます。

第4幕

第1場

マドリードの王宮の王の書斎
妃に一度も愛されたことがなく、今や息子にも裏切られた国王は、王として生きることの苦難について瞑想し、孤独にアリア「ひとり寂しく眠ろう」を歌い悲しみ吐露すします。そこへ盲目の大審問官があらわれ、二重唱「私は王の御前にいるのか」となり、皇太子を死刑に処するよう求めます。そして大審問官は進歩的な理想主義を掲げるロドリーゴこそ、本当の異端者だといいその命を要求します。ですが王は忠実な家臣の命は差し上げられぬと答えますので、大審問官は怒って私は王でさえ裁判所に引き出すことが出来るのだと言って、そのまま僧院へ戻ります。ここで二人の権力闘争が繰り広げられます。そこへ突然王妃エリザベートが来て、宝石箱のひとつがを盗まれたと駆け込んで来ます。王妃の知らぬ間に、エボリ公女が王に渡していたのですが、その中にはカルロスの肖像画が仕舞われていました。王が宝石箱はここにあると言い、そこにカルロスの肖像が入っているのを示し、王妃の不倫を詰問します。彼女は決して自分は、汚れていないと反論しますが、王は聞き入れようとはしません。彼女はその場に失神し、急を聞いてエボリとロドリーグが駆けつけます。二人の介抱で王妃は意識を取り戻し、王はロドリーグを従えて退場します。するとエボリは王妃に、カルロスを愛する余りの嫉妬から、宝石箱を盗み出したと告白し、また国王に誘惑されて不倫の関係になったことも白状します。王妃はエボリ公女に、この国を離れるか、修道院へ行くように行って立ち去ります。エボリは嫉妬と美貌の思い上がりから、こんな結果になったと、アリア「呪わしき美貌」を歌います。

第2場
ドン・カルロスの牢獄
エリザベート・ド・ヴァロワ1605年、フアン・パントハ・デ・ラ・クルス画
奥には鉄格子があって牢と番兵たちが行き来している中庭とを隔てています。 カルロスは頭を両手で抱えて物思いにふけりながら座っています。ロドリーゴが入ってきて牢番と言葉を交わします。その動きは夢想に耽っているドン・カルロスを現実に引き戻します。ロドリーゴは皇太子を救出するために、自分が悪者になり、カルロスには何の罪もないと手紙を書いて、裏切りの証拠をロドリーゴが故意に残して置いて国王の目に触れるよう仕組んだのでした。そしてフランドルの民を皇太子が救ってくれるよう託して、彼自身は死ぬ決意をします。そのとき銃声が聞こえロドリーゴは倒れ、すべては王妃に託してあると知らせます。火縄銃で肩を撃たれ、瀕死のロドリーゴは2番目のロマンス「私は満ち足りて死んでいきます」を歌い、最後の息のうちにカルロスに別れを告げます。そして彼女が、サン・ジュストの修道院で待っているといいます。そこへやって来た王は、皇太子を許して剣を返します。これに続くロドリーゴの亡骸を前にフィリップ2世が「ただ一人の英雄を失ってしまった」と悲痛なアリアを歌います。すると皇太子の解放を求めて、民衆が暴徒化して城内になだれ込んで来ます。このシーンの間にひとりの小姓が入ってきて群衆の間をすり抜けてカルロスに近づき、彼の肩にマントを投げますがこの小姓はエボリでした。この騒ぎは、エボリ公女がカルロスの命を救うために民衆を煽ったものでした。すると大審問官が登場して、神を守る国王を敬うよう厳かに命令すると、全員が平伏して国王を讃えました。大審問官は跪いた民衆の只中で王に会うために近寄って来ます。エボリが王妃の足元に身を投げ出すと、王妃は赦しの証としてその手を彼女に差し伸べるのでした。

第5幕

サン・ジュストの修道院 夜 月明り
エリザベートがゆっくりと、物思いにふけりながら登場 彼女はカール5世の墓に近づいて跪きます。皇太子を待つ王妃は、過ぎし日のフォンテンブローの森の思い出を懐かしむと、エリザベートに、少女時代の喜びとカルロスへの愛が蘇り、アリア「世のむなしさを知る神よ」を歌います。彼にロドリーゴの遺言を伝え、新しい人生を歩ませるようとします。再会した恋人たちは最後の別れを告げます。「美しい夢を見ました」で王子はスペインを捨ててフランドルへ行き、自由のために戦うのだと伝えます。続く二重唱は「天国で会いましょう」となり別れをお互いに確認します。そして天国で再会することを約束し、別れの悲しみをうたい上げ、「永遠にさらば」と二重唱になります。その場にフィリップ、大審問官及び審問所の役人たちが入って来て、二人を逮捕するよう衛兵に命令します。カルロスは身を守りつつカール5世の墓の方に戻って行くと扉が開き、修道士が現れます。カルロスを彼の腕の中に引き寄せマントで覆い隠すとカルロスを墓の中に引き入れます。エリザベートはそこへ倒れ、人々が驚愕するうちに幕が降ります。


リッカルド・ムーティ指揮、ミラノ・スカラ座

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